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ケンチクに対する「アイ」

愛なんてコトバを、はずかしげも無く使うには
ちょっと行き過ぎたメタボなkameplanですが。

ケンチクに対する「アイ」についてちょっとお話を。





正直な話、現在のケンチク業界は決して儲かる業界ではありません。
公共事業は当然のごとく縮小傾向。
民間事業も、この景気では一部の事業系建築のみ好況で、
住宅を中心とした個人需要は冷えきったまま。
これは設計のみならず、大工さんや左官屋さん、設備屋さんや鳶さん、
その他各職種の職人さんにも言えることです。

そもそも住宅と言うケンチクは、好不況に関わらず、
気持ちを持つ程儲からない商売なのです。

「アイ」=「愛」であったり「I」(アルファベットのアイ)であったり。

私達設計職は、一般的にはカタチを考える職能と捉えられがちですが、
カタチ以前に考え無ければならないことの方が多いのです。

私達を語るとき、よく「デザイン」という言葉を使われます。
どうも「デザイン」=「カタチを考える」と捉えられていますが、
デザインの本質はカタチだけにあるのではありません。
カタチのみを考える事は、意匠のみに狭められた捉え方。
デザインするということは、そこに起こる森羅万象を捉え、
その様々なことを「計画」することだと思っています。

その中には見えない「空気」や「熱」のことはもちろん、
「環境」や「構造」、果ては工事における職方さんの動きや、
お施主さんの資金計画も含まれると思っています。
その全体を計画し、遂行していくことそのものが「デザイン」ではないかと。

デザイン=意匠ということに注目してしまうと、
寒くても仕方がないケンチクもアリ。
カッコいいけど地下資源浪費バリバリもアリ。
構造的には不安定でも、カッコ良ければそれもアリ。
職人さんがどう作るかも迷うような意匠でも、それもアリ。
良いプランや意匠でも、お施主さんの財布を無視する事もアリ。

これでは最適な建物は建ちません。

ケンチクに対する「愛」とは、
そこに住まうお施主さんに、出来るだけ良いシゴトをすることであり、
材料を無駄無く使い、吟味して選ぶことであり、
職人さんの持つ技術を遺憾なく発揮できる環境を作ることであり、
その全てが、お施主さんの予算内に収まることです。

また、もうひとつの「I」とは、
自分が持つ職能を遺憾なく発揮すること。
限られた環境の中で最善を尽くすこと。
その中に、自分なりのシゴトを残すこと。
もちろん、お施主さんの要望を可能な限り実現し、
お施主さんの「I」を創る助けになること。

設計者としては、そのことを具現化できる職人さんや工務店さん、
それを望むお施主さんが揃った最強チームが出来ることが、
なんと言っても喜びにつながり、
設計としての職能を最大限に発揮し、
ガチンコも厭わない姿勢でいられるのです。

そうである限り、儲けは二の次になりがち。
やるべきことを出来る環境を作ることもシゴト。
それは職人さんにも通ずることで、
その気持ちが通ずる良い現場であると意気のある職人さんは。
わたしが思う以上の施工提案や材料変更を奨めてくれます。
これは設計としても嬉しい限りで、
設計意図に反しない限り、出来るだけその意見は聞き耳を立て、
採用する様にしています。

ケンチクに対する「アイ」とは、そのような協同によってしか産まれないと、
やればやる程身にしみるkameplanなのです。
by kameplan_arch | 2007-12-04 23:39 | 設計についての一考察
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