「高断熱住宅は健康に良い」というと、ちょと怪しく聞こえますね。
「昔の家には断熱などなかった、だからちょっと寒くなっても風邪も引かなかったしみんな健康だった」
と言われる方もいらしゃいます。
今の築60年の家に引っ越して来て、その意見自体が精神論だな(笑)と感じる様になりました。
確かに寒くて暑くて段差だらけのこの家に鍛えられることもありますが、
それは住まい手である私が健康である事が前提。
一度体調を崩すと、前に住んでいたマンションの時にくらべ、治りが遅くなった様に感じます。
それが「鍛え方が足りない」のかもしれませんが(笑)
近畿大学理工学部建築学科教授 岩前 篤氏、
健康・省エネを推進する国民会議
の研究発表による上のグラフがあります。
この研究は、転居前、転居後の断熱性能の違いによって、
症状の発生がどう変わったかと言うことを疾患ごとに統計的にまとめた物です。
断熱グレード3が新省エネ基準、グレード4が次世代省エネルギー基準、
グレード5がそれ以上の性能で、順に症状の発生が緩和されている事が分かります。
ただし、この中で目のかゆみや肌のかゆみ、花粉症、アレルギー鼻炎、アトピー性皮膚炎などは、
ダニやカビの発生が抑えられた住まいに転居したことも作用していると考えられ、
断熱性能の向上が直接的に作用したとは言い切れませんが、
その他の症状は飛躍的に向上しています。
(高断熱、高気密化によって必要になった計画換気が作用しているのかもしれません)
また、室内の体感温度が上がる事で、家の中でアクティブに動く様になり、
症状の緩和につながったと言う事も考えられます。
高断熱化によって症状が緩和されると言う事は、それだけ生活の質が上がる事にもつながり、
更には医療費の抑制にもつながると言ってもいいかもしれません。
特にお年寄りがいらっしゃる住まいは、ヒートショックによる心疾患を防ぐために、
バリアフリー化とともに重要な事だとも考えます。
断熱改修は目に見えない体感温度を改善する事なのでまだまだ一般的ではないですが、
耐震改修の様に壁を剥がす工事を行う場合、一緒にやると工事費の節約にもなります。
また、二重窓にしたり、天井に断熱材をふきこむと言った一部分の改修でも、
元の性能によっては飛躍的に改善できることもあります。
高断熱=省エネだけと思われがちですが、温熱環境の改善はこのような関連性もあるのです。