先日の名古屋の建築士会の大会の帰りに、
折角だからと常滑の「
INAXライブミュージアム」に立ち寄ってきました。
写真は5つある建物のなかの一つ「土・どろんこ館」
基本構造はRCですが、外部を「
版築」という、
土を型枠に詰めながら築き上げていく手法の壁で構成されています。
写真では分りにくいかもしれませんが、
壁が地層のように層を成していて、これが版築の表情なのです。
構造体の外部に80cmほどの空間を型枠で作り、
石灰等を混ぜた土を、約10cm程度の厚みで突き固めていき、
それを積み重ねていくやり方で、
型枠を外すと、突き固めた層がまるでバームクーヘンの縞模様のように現れてきます。
土というと「塗る」という左官的な手法が代表的ですが、
こういった使い方も面白いですね。
ある程度の厚みがあれば防火上も有効ですし、断熱材の代わりにもなる。
低層の建築であれば、版築そのものが構造にもなるのではないでしょうか?
土・どろんこ館の内部で「あ〜でもない、こ〜でもない」と話す参加者たち。
設計職の仲間で建物を見に行くと、必ずこのような風景がどこかで見られます(笑)
どうやって施工したのか、下地は何なのか、使っている材料は?等、
分らない部分は触ってみたり、かるく叩いてみたりして推測します。
(もちろん、管理者の方に了解済みです)
こんな人だかりが、あっちで「うむむ」、こっちで「なるほど」。
一般の方から見ると、ちょっと異様かも?(笑)
今回一番気に入った「窯のある広場・資料館」。
大正10年に完成した、土管等を作っていた窯工場。
外壁は焼杉、屋根は現在のものより小振りないぶし瓦。
瓦も均質なものでなく、焼きムラや多少の不整形があるモノを使っている。
そのせいか、屋根面が大きい割に変な緊張感がない。
なんと言っても開口部のバランスと勾配、外壁の表情が相まって、
結構大きな建物の割には、余り威圧感が無い。
開口部も木製の建具が引き込めるように設えられていて、
とてもかわいらしい。
今の建物から見ると、すこし雨じまいが甘いように見えますが、
これでも十分要を成しているのですから、こういうやり方もありですね。
こういう感じで、開口部の配置にある統一性がある訳ではないのですが、
そのランダムさがまたやわらかな表情に寄与しているのかもしれません。
内部のトラスもダイナミックながら繊細な線材を使っていて美しい。
伝統民家のような「どうだっ!!」感が無く、好感が持てます。
現在の法規制の中で、外壁や開口部に木を使うことは、防火上非常に困難です。
だからふと周囲をみると、簡単にクリアできるサイディングや
アルミサッシばかりの建物になってしまった。(私を含めて)
でも、それが街並に寄与する材料なのか、
住まい手を含めた人に寄与する材料なのか。
それ以上に、有限な地下資源を無駄に使うことにならないか。
工場として生まれたこの建物が、こんなにプリミティブで美しい。
却って今の住宅はどうだろうか?
そんなことを考えながら帰ってきました。